Saturday, September 30, 2006

「731部隊―実像と虚像」講演録 質疑応答編 17

質問 ということは、やはりその人骨(ほね)は人体実験の痕だと考えていいのでしょうか。

常石 そうともいえないと思います。例えば、今まで日本で出会うことのなかったような、人骨(ほね)、例えば日本で手に入らないような種類の民族の方がなくなったときに、その人骨(ほね)を持ち帰る、そんなこともあったかと思います。そうしたものは実験というよりも単なる窃盗行為ということになり、必ずしも実験をした結果のものではないと思います。

質問 数年前だったかと思うんですけれども、痘瘡の菌ですね、ロシア辺りが菌を保管していると、世界的には痘瘡はなくなったので、もう使わないので捨てたんだけれど、確かロシア辺りがそれを保管して、将来的にまた微生物兵器としてみたいな話を聴いたことがあるんですけれども、抵抗がなくなったような日本人に密かに生物化学兵器に使うというようなことはないんですか。

常石 天然痘については、よく言われるんですれども、それは何十年も前に撲滅されて、今ですと30歳以下ですと天然痘の予防接種は受けていません。僕にもここの所に痕が残っています。 天然痘を撲滅した時に天然痘のウィルスを全部破棄しようという声があったんですが、一方で万が一の事を考えて保管しようというので、アメリカのアトランタとソ連のモスクワで保管することにしました。

ところがその後、アトランタでは保管されていますけれども、モスクワで保管されていたものは何か理由つけて、WHOで承認を得てシベリアの研究室下に送られます。 ところが1993年に、ソ連からアメリカに亡命した K・アリベックはソ連の生物化学兵器の技術部門のヘッドでした。彼が書いた『バイオハザード』(現在は『生物兵器』二見書房、1999年)という本の中で、ソ連の生物化学兵器の研究開発チームは、シベリアに移された天然痘ワクチンを使って生物兵器化しようとしていたということを暴露した。

それで、ソ連に保管されていたものはきちんと保管されていなかった。保管したものは保管されているのですが、ウィルスを増やすのは簡単ですから、保管したものを元にして増やすという活動に使われたのではなかろうかというふうに考えている。 アリベックが指摘しているのは、そこで研究していた人物が、自分の使っていたウィルスを持ってどこかの国へ流れていくということです。その結果として天然痘ウィルスは使われる危険があるし、使われると免疫がないからえらいことになるということが言われている。

さきほど疫学的調査をすると流行している病気の原因が人為的なものか自然の流行かが分かると言いましたけれども、それはかなり昔の話で、実は生物兵器禁止条約ができた1972年に遺伝子組み換えというのが発見・発明されます。そういったものを使うとさっきの場合にはノミの媒体を使うのでノミの活動が下がると流行も下がるんです。ところが1910年の肺ペストの流行では人から人へ感染するので、5万人もの死者がでたと申し上げた。ですから遺伝子組み換え技術なんかを使ってもしそんなことが簡単にはできなくても、いずれ行われるようなことになると事態は面倒なことになるだろう。

兵器化される天然痘のウィルスとワクチン用は別なんです。ですから実は天然痘を撲滅したときに万が一を考えて、とっておくというのは実は本当は意味がなかった。ワクチンの専門家が今になってどうしてあのときもっと強く主張しなかったのかという反省の弁を述べてはいます。

でもあまりこういうことを言うと、やっぱり生物・化学兵器は貧者の核兵器だと言われちゃうかなあと思うし、でも現実にはそういうところもあるということは言えるでしょう。

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